相続放棄をすることによって、法律上、初めから相続人でなかったということになりますので、被相続人に借金などのマイナスの財産があった場合にこれを返済する必要はありません。相続放棄は、相続の段階でプラスの相続財産がなく、借金などのマイナスの相続財産しかない場合あるいはマイナスの財産の方が多い場合などに選択される方法です。
つまり、相続放棄を行う最大のメリットは、お亡くなりになった被相続人の負債(借金)や保証債務を負担しなくていいということです。
亡くなった方に、わずかな預貯金などの財産と多額の借金があった場合、そのまま相続してしまうと、プラスの財産を上回る借金を返済しなければなりませんが、相続放棄をすることによって、その負担から逃れることができます。
また、相続財産が不動産のみで他に目ぼしい財産がない場合などのケースでは、財産が細分化・散逸しないように相続放棄が用いられることもあります。
もっとも、相続放棄は、いったん行ってしまうと撤回はできません。したがって、相続放棄を検討している場合は、相続放棄が認められる期間である相続が開始してからの3ヶ月以内に相続財産の調査を行い、相続放棄をされるかどうかは慎重に判断されることをお勧めします。また、相続財産の調査等に時間がかかる場合には、家庭裁判所に熟慮期間を伸長する手続きを行なえる可能性がありますので、相続放棄をするかどうかについてお悩みの方は損をしないためにも一度弁護士に相談されることをお勧めします。
なお、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは、単純承認したとみなされ(民法921条1号)、無限に被相続人の権利義務を承継しなければならない可能性がありますので、十分ご注意下さい。